§4 品質第一 – 納期さえ許せば。

人を投入するか、実現する機能を削るかという選択権がない場合、厳しい納期に間に合わせるために、 犠牲にできる唯一のものは品質である。

大抵の人は、自尊心を、自分の作った製品の質と強く結び付ける傾向があるため、製品の質を落としかねない厳しい納期設定は、感情に火をつけることになる。

ユーザーが最も気にするのは納期である。過度な高品質は納期オーバーの埋め合わせにはならないと考える。しかし、長い目では、市場ベースの低い品質要求は、余計なコストがかかる。そこで次の教訓が得られる。

エンドユーザーの要求をはるかに超えた品質水準は、

生産性を上げる一つの手段である。

エンドユーザーの要求をはるかに超えた品質水準を作り上げるには、価格と品質はトレードオフの関係にあるという考えを排除することである。反対に、高品質がコスト低減をもたらすと考えるべきである。

ヒューレット・パッカード社は、開発者が設定した高い品質基準によって生産性を上げ、利益を得ている企業の例である。同社のエンジニアは市場が要求する品質よりはるかに高水準の品質を自分が供給するという社風を負っていることを十分に認識している。品質に対するこうした共通認識は、仕事に対する満足感や、業界で最も低い退職率としても表れている。

日本の企業、特に日立ソフトウェアエンジニアリングと、一部の富士通の部門では、十分な品質水準に達していないと判断された製品の出荷を拒否する強力な権限をプロジェクトチームが持っている。顧客が、品質基準以下でも何でもいいから早く出荷してはしいと切望しても、出荷品質基準に達しないかぎり出荷を延期するのである。

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