1-3 元型の存在証明/1-4 例示

分裂病患者や3歳~5歳の幼児の夢のモチーフを観察することで、元型の存在証明が可能となる。

しばしば、彼らの夢には、彼らが経験上知ることのあり得ない神話的なモチーフが現れる。

このモチーフはどこから来たのか?個人的な経験からではありえないのだから、これは無意識の中に遺伝的に受け継がれた太古の記憶に違いない。

一人の分裂病患者の例を挙げよう。

この患者は、自分を神であり、キリストであると考えていた。この患者は太陽を目を細めて見つめながら首を揺らし、「『太陽のペニス』を操って」「風を起こして」いるのだと話した。

4年後、ある神話の本が出版され、これと似た伝承が書かれているのを偶然見つけた。彼が当時この本を読むのは不可能である。

だから、太古の昔から遺伝的に伝わる「元型」が、この患者の無意識の中に現れたり、別の時間別の場所では神話のモチーフとして現れたりしたことがわかる。

1-1 集合的無意識とは

無意識には2種類ある。

1種類目は、個人の体験によって形成される無意識である。これは、一度は意識された経験が、忘れられたり抑圧されたりして、意識されなくなってしまったものである。

2種類目は、個人の体験によらない無意識である。これは、遺伝によって先祖から伝わってきた何らかの「心の構造」である。

世の中の人は1種類目の無意識の存在しか知らず、2種類目の無意識など存在しないと言う。

私は2種類目の無意識の存在を確信している。私は2種類目の無意識を「集合的無意識」と呼ぶことにした。「集合的」というのは、このタイプの無意識の型は多くの人々の間で非常に似ているからである。

集合的無意識の「型」にも名前を付けた。私はそれらを「元型」と呼ぶことにした。